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7月末、東北で。

7/29-30、31-8/1と東北へ出かけた。最初は石巻に届けて貰った支援物資の荷受と、南三陸歌津の漁師を友人を訪ねる為。

石巻には、これからプロジェクトを一緒に立ち上げる予定のトライウォールジャパンというダンボール会社のファブリケーターがある。このプロジェクトから、まだ小さいけれど業務を発注する仕組みになっている。今野梱包さん。地震で被災した工場兼倉庫を訪ねた。
ここに、福岡のHIGHTIDEさんという文房具屋さんから、大量の支援物資をお送り頂いたので、その荷受け。同じプロジェクトで使う物資達。電卓、ノート、アルバム、ファイル、カンペンケースにカードケース、各種フォルダーなど、全てを合計すると1万点を超える文具をプロジェクトを通して被災地に届ける。
「来週金曜日にダンボール箱300くらいお送りしていいですか?」と一週間前に問われ、慌ててあちこちに手配。半分は、前橋のトライウォールジャパンの倉庫に届けてもらった。ウィルライフという関連会社の社長、増田さんに心より感謝。プロジェクトの詳細は別途お知らせする予定だが、震災リゲインの支援希望者同士を「繋げる」活動のひとつ。
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石巻のこの工場は、内陸部にあるため津波の被害こそないが、地盤がゆるい地域で工場建物周辺の地盤が沈下。内部床も歪み、フォークリフトが勝手に動いてしまう程だという。社長以下社員の懸命の努力で工場は稼働しているが、まだなにかとご苦労が多い様子だった。段ボールは梱包材利用の他、家具や遊具、恐竜模型の制作などにも活用されており、被災地でも手軽に活用できそうな商品が並んでいた。ペット用のちいさな棺桶をつくり、被災地に届けたとも話してくれた。
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その後、南三陸町の歌津へむかった。途中、内陸部はいつもと変わらぬ景色に見えて、よく見ると崩れた瓦屋根、ヒビの入ったビル、ガラスが破損したままの商店など、地震の爪痕はまだまだ散見された。
沿岸部にきて、ショックを受けた。時間がかかるだろうことは当然理解していたつもりだか、被災地の状況が四月に調査に入ってからあまり変化していなかったからだ。

まだまだ、まだまだ、なんだ。

瓦礫は山積み、ビルの上に車。原型を残さぬほどに痛めつけられた車はまとめられてはいたが行き場もなく放置され、木々には生活の痕跡が引っかかったまま。塩水に浸かり茶色く立ち枯れつつある樹木が、四月よりも鬱蒼とした緑の最前列で目立っていた。暮らしが営まれていたであろう地面に、雑草が茂り瓦礫を覆い隠していた。志津川を越え歌津に入ると、状況はさらに悪く、ほとんど進んでいないようにも見えた。
4月にはどこにでもいた自衛隊の姿はもうない。夏休みでアシスタントとして同行した小4の長女は、最初事態がよく飲み込めていないようだった。

仮設住宅ができ、歌津中にいた多くの被災者はすでに2組に減っていた。
ある施設のテニスコートに建設された仮設住宅にいる漁師を尋ねた。この日は「雨天で瓦礫撤去もなく家にいるから」、と石巻で電話した際に聞いていた。訪ねると、奥さんと小さなペットの犬と迎えてくれた。「玄関に網戸がなくて、でも開けなければ風通しが悪く、開ければハエが入ってくる」というところから、徐々に今の状況を聞く。6月に、バラバラに避難していた家族がようやく再会したこと、毎日続く瓦礫撤去、進まぬ復興計画案、行政の指針に対する不安、他地域へ流出する仲間たち…。話は尽きない。私はただ聞くことしかできない。ボランティアの不足や将来への不安が大きな話題で、彼の周りにいた20数名の漁師の中で「漁を続けると決めたのは俺だけだ」と聞いた時、言葉を失った。たった1人。

確かに、船をつける為の港はコンクリートがめちゃくちゃにめくれ上がっている。共同処理場は流され、近隣地区へ二地区共同の処理場建設が決まった為、歌津からでは不便極まりない。船を流された仲間もいる。高齢化が進み、後継者もいない。なにに希望を持ち、明日への活路を見いだせば良いのか?彼の家族は、これまでも人の2倍のイカダを持ち牡蠣の養殖をしてきた。奥さんと共に、人の2倍働いてきたという自負もある。子供を育て、半年前に自宅を新築し、その前年には船を新調している。ダブルローンだ。船は残ったものの、奥さん自慢の家も、イカダも漁具も、生活用品からなにからなにまで、全て流された。持っていたイカダは45台。1台治すのに100万かかる。しめて4500万円…行政が半分支援してくれるというが、残り半分はどうすれば良いのか?

それでも、早く瓦礫撤去に目処をつけ、漁を再開し、会社化して仲間を雇用したい、と夫婦で語ってくれた。まずは支援してもらった釣り船を出し仕事を再開する。港を整備してもらい、漁や養殖を再開したら、いずれ個人処理場を作り、そこに親子で体験教室ができる施設も併設したい。大きなアクリル水槽に、常に様々な魚介類をいれ、海の中でどの様に漁をしているか再現して子供達に見せてあげたい、わかめ漁も子供にとっては楽しい体験。いろんな人に歌津に来てもらいたいと話す。

しかし、釣り船再開の目処は立ちつつあるものの、海はまだ瓦礫だらけ、その他のことに至ってはどこから手を付けていいかもわからないとため息をつく。HPの作り方だってよくわからない。パソコンだってない。
二本目のビールはウィスキーに変わり、ひたすら話し続ける彼と、わたしができるのは話しを聞き、一緒にタバコを吸うコトだけorz。彼が一旦席を外している間、奥さんから津波がくる数日前の話しから、仮設にはいるまでの生々しい体験談を聞いた。猫が、二匹逃げ遅れた。まさか、全てが流されるとは想像だにしていなかった。

APバンクの永井さんが、まずは人が寝泊まりし、自炊ができて、対話の場が持てる小屋を歌津に建てると約束してくれたらしい。土地の取得や地元材での建設の話しなど少しずつ進んでいるという。生活再建へ向けて、地元の仲間で集まり、対話する時間と空間が必要だ。それが、まずは一番の支援だろう。

さて、そのために、自分ができるコトは何か。永井さんは空間を、では私は時間を。なによりも、一歩ずつ足を前に踏み出すための、小さなきっかけを、たくさん、みんなで、協力しよう。私がうなだれていても始まらない。だから、少しずつ、動きはじめる。

彼には伊里前契約会という、元禄6年から続く「結」の仲間がいる。すごいことだ。数百年続く彼ら契約会の特徴は、子世代が結婚したらそこで親世代は引退し、子世代が契約会の権利を引き継ぐ点。だから、若い頃から契約会に入る。多くの契約会は、親が元気なうちは親が会合に残るため、子世代への引き継ぎが遅れ、コミュニティーへの積極的な参加の機会を促すことが難しい。私が住む東麻布の町内会も、会長は80代。なかなか子世代同士が顔を合わせる機会はない。伊里前契約会は長い歴史を持ちながらも若い人がしっかり運営をしている。モチロン親世代も参加はするので、年齢層の幅広いコミュニティーが実現されている。

彼らを旅行会社でボランティア+観光ツアーをしている仲間に繋ぐ。ただのボランティアツアーではなく、コミュニティーと関わりを持ちながら、第二のふるさとのように地元の人たちと付き合えるようなツアーにする予定だ。設計は、慎重にしなければならない。地元の人との信頼関係があることが大前提で、同時に、誰よりも最初にボランティアツアーを始めたこのツアー会社とだからできることだ。
釣り船の客になり、海を掃除し、瓦礫撤去もするだろう。生活再建に向けての作業を手伝い、知恵があれば寄せ合おう。彼らの契約会の話しを聞き、モチロン被災体験も聞く。漁師達も、ようやく話せるようになったし、話さなければいけない、と考え始めている。

過去、この集落はどのような場所だったのか?問題は、自慢すべき点は?今をどうするのか?未来に向けて、どう一歩を踏み出し、何を目指すのか。丁寧に、ひとつづつ一緒に話しをしていければいいと思う。そのために必要な人や企業を一緒に考え、私は探し出し、お願いして、歌津に来てもらおう。みんながちゃんと、仕事にできる仕組みも考るよ。

自力でふんばるしかない小さな集落は沿岸部に無数にあると思う。
そこに少しでも、丁寧で継続できる支援の手を伸ばせる人が増えたらいいと思う。少しずつ、焦らずに。
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漁師の家で、地元で採れたタコをいただいた。塩ゆでしただけのタコのアタマに、刻んだミョウガ。うまい。絶品。「歌津のタコはうまいぞ、ウニだってアワビだって何でも採れる。本当にうまいから、全部食え。また食べに来い」

はい。喜んで。何度でも。
by LS_LAB | 2011-08-07 13:56 | 震災リゲイン


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